DELFを受けよう
なぜDELFが必要か?
DELFはフランスの教育省が定める、非フランス語圏の人を対象としたフランス語能力認定試験です。どんな場面で役立つかというと、フランスの大学で勉強したいのであれば、DALF C1以上あるとフランス語の試験が免除されますし、仏系の企業で働きたいのであれば、B2以上あれば応募できることが多いです。あと大学によりますが、B2があれば留学できるところもあります。
今回解説するB2はいわゆる中上級といったところ。B1は日常からフランス語圏に旅行するには困らないレベルを指しますが、B2はグッと難易度が上がって会社の上司や行政サービスに対する手紙など、フォーマルなやり取りができるかどうかが試されます。
DELF・DALF公式サイトにあるように、
DELF B2レベルでは、使用者はさらに自立の度合いを増し、自分の意見を主張するために筋道の通った議論の流れを作ることができ、自分の見解を展開し、交渉することができます。このレベルの受験者は、社交的な談話の中で流暢に会話を交わし、自分の間違いを自分で修正することができるようになっています。
出典・引用:日本フランス語試験センター公式サイト DELF B2
概要を読んだだけでも、なぜ仏系企業の応募資格の一つとしてDELFのレベルがB2以上になっているかよく分かりますよね。大学もしかり。議論や交渉ができるということは、国内の企業でも必要不可欠です。それがフランス語でできるという証明になるわけですね。
B2の難易度はどれくらいなのか?
一番気になるところですよね。B1に比べると、文法はもちろん、各カテゴリー(日常生活、教育、医療、文化、政治、社会など)の語彙や議論展開に重点を置いています。文書作成(Production écrite)と口頭表現(Production orale)は特にそうですね。テーマや問題に対して、きちんと説明ができるか?議論の中で自分の意見を述べて、相手に納得してもらうことができるか?ということだと思います。
個人的な見解ですが、B2以上なら「私、フランス語話せます」って日本人に対して自己申告しても恥かかないレベルだと思いますね。この日本人というのがミソで、なんでかというと一般的に日本人は身内(他の日本人)に対して高いクオリティやレベルを求めるので…。なので、「B2ってどれくらいなの?」って聞かれたら、「フランス語圏で暮らしてけるくらいかなあ〜〜」という感じに答えても大丈夫かな、と思います。
B2の試験内容
A1〜B2まであるDELFの試験はすべて4つのパートから構成されています。1つのパートにつき、25点満点の得点配分。合格するためには、合計50点以上が必要です。(※1パートの最低点は5点以上必要。5点以下のパートがあった時点で不合格)
- 聴解(Compréhension de l’oral)
- 読解(Compréhension des écrits)
- 文書作成(Production écrite)
- 口頭表現(Production orale)
2020年春季から試験内容が一部変わった!
2019年10月、CIEPからすでにアナウンスがありましたが、受験者のストレスを減らすことを目的に、DELF/DALFの試験内容が一部変更されました。
B2では、
- 聴解(Compréhension de l’oral)
- 読解(Compréhension des écrits)
が筆記式→マークシート式に変わります。現行のDELFB2対策本では、変更が追いついていないのが現状。ですが回答形式が変わっただけなので、対策本はそのまま使って全く問題ないと思います。
ちなみに私がB2を受験した時は、回答形式変更のアナウンスがあったにも関わらず、旧式のままでした(混在する可能性があるというアナウンスがあったとはいえ、試験ギリギリでの通知に一部の受験者は慌てたんじゃないでしょうか…)。

B2の採点で重視されること
B2で重視されることは2つ。
まず一つはB1に引き続き、
表現にバリエーションがあるか
ということ。「同じことを言うのにどれだけ表現の手数があるか」を採点は重視します。だから、さほど考えなくてもパッと出てくる表現や文法を増やすことが一番簡単な試験対策の1つといえます。実際、試験時間はとても短く感じるものです。慌てずに、自分の言いたいことを簡潔に表現できるように勉強するのがいいと思います。
B2では、P.E.(文章表現)とP.O.(口頭表現)出される問題のテキストや単語はそのまま使わない方が得点アップにつながります。それには、一つの単語や表現に対してできるだけ多くのSynonymes(類似語)を覚えておく必要があります。これは何も難しい単語を1から覚えろというのではありません。同じ意味の単語に入れ替えるだけ。簡単な例を下に載せましたので、参考にしてみてください。
(1)Les télétravailleurs n’ont pas besoin de se déplacer de chez eux.
de chez eux → de la maison
もし、chez eux とテキストに出て来た場合は、à (de) la maisonに言い換えることもできます。(2)はタイムリーな話題なので載せました。
(2)La crise sanitaire actuelle a évoqué plus de 98 millions des morts dans le monde.
actuelle → de nos jours / maintenant / aujourd’hui
actuelle は、de nos jours / maintenant / aujourd’huiに言い換えることも可能です。現在を表すnom, adjectif, adverbeを入れればいいので、簡単ですよね。
と、こんな具合に違う言い方や単語に差し替えることです。スマホをお持ちなら、フランス語の辞書アプリを入れていると思いますので、そこでSynonymesをまめにチェックするといいですよ。
私が使っているのはPetit RobertとLarousse Juniorの2つ。もちろん仏仏辞書です。プチロワイヤル仏和辞典を勧めてる方も多いですが、私は仏和辞書はおすすめしません。
B2の聴解(Compréhension de l’oral)、読解(Compréhension des écrits)は解答がマークシート式になった代わりに、いろんな表現の答えが並びます。「同じことを言うのにどれだけ表現の手数を使われているか」を覚えておかないと、マークシートのメリットを味方にできなくなります。簡単な対策は手持ちの文法書などで基礎をしっかり身に付けること。文法はもちろんですが、Bレベル以上になると語彙力がモノを言いますので、自信のない人は、面倒くさがらず復習するといいでしょう。
B1からB2に移行する時に使える文法の教科書でおすすめなのは、Progressiveシリーズの「Grammaire progressive du français avancé B1-B2」。
余力のある人は、さらに1レベル上の「Grammaire progressive du français perfectionnement C1-C2」で予習しておくと◎。こちらの方が各prépositionの使い分けの解説がわかりやすいです。
議論展開ができるか
B1では「同じことを言うのにどれだけ表現の手数があるか」を採点は重視しますが、B2ではさらにステップアップして、与えられたテーマを「フランス語のロジックに沿って説明できるか?議論展開できるか?」を見ます。文書作成(Production écrite)と口頭表現(Production orale)は、特にそういった能力が試される試験内容になっています。
対策をしつつやること+α
B2以上目指していて
発音に自信がない
リスニングに弱い
なら「発音矯正」を早めに視野に入れたほうがいいでしょう。なぜなら、発音やイントネーションは口頭表現の採点対象に入るからです。
私はB1の時に発音の矯正をあまりやらないまま受験しましたが、試験官に首を傾げられたことは一切ありませんでした。でも結局、リスニングが上がらないのは発音が進歩してないからだと悟り、発音の本を使って発音矯正しました。期間は1年弱かかりましたが、発音体系をじっくり学んで得たことも多かったんです。だから、「発音に自信がない」「ラジオ聞いてもよくわからない」「ネイティブの人に通じないことがある」など、悩みがある人は「発音矯正」することをおすすめします。

例えるなら野球のように、たとえ先天的な資質がなくても正しい努力をすれば、プロ野球で活躍できるのと同じことだと思います。逆にそういった資質があるにも関わらず、間違った努力を続けていれば、高校野球までは活躍できるかもしれないけど、プロでは通じないようなものです。そうした人が壁にぶち当たった時、正しい努力でやり直すにはそれだけ時間がかかります。私も含め、おそらくこのブログの読者は、先天的な語学の資質や環境がない(耳があまり良くない、短期記憶に弱い…など)ことを自覚していると思うので、まずは「正しい努力」を身に付けたほうがいいと考えています。
最低6ヶ月は準備が必要
私は初めてのDELFがB1で準備期間は20日程度でした。その反省も含めて受験後、B1のブラッシュアップを2週間ほど行ってから、B2の準備に取りかかりました。今回コロナウィルス感染拡大の影響で試験が延期になったこともあり、対策本を2周半することもできました。私が特に力を入れたのは、すでに解説した通り語彙力の強化と表現のバリエーションを広げること。それから発音の矯正ですね。これはリスニング力を上げるために行った対策の一つです。定期的にシャドーイングもやりました。テーマもバラバラ、リソースも様々なところから引っ張ってきました。
B1で楽勝だった人もB2になると各パートのレベルがグワッと上がるので、最低6ヶ月くらいの準備期間を設けたほうがいいと思いますよ。
もう時間がない!時はどこを重点的勉強すればいいか?
もう時間がない!対策はどこからやればいい?となった時に一番効果的なのは、
- 文書作成(Production écrite)
- 口頭表現(Production orale)
の対策です。これはどのレベルでも効くので、P.E.(文章表現)とP.O.(口頭表現)を詰めていくのが点数を稼ぎやすいと思いますね。リスニングやフランス語の文章を読む熟練度を上げるには、ある程度の時間と練習を重ねていく必要があります。例えば、試験まで残り3ヶ月のうち勉強時間があまりないのであれば、インプット重視のパートに労力を割くのはおすすめ出来ません。
一番点が伸びやすいのは口頭表現と作文
この2つの何が良いかというと、リスニングや読解が苦手でも出来るからです。作文は文章が書ければいいですし、口頭表現は練習を重ねるほど上手くなります。
近くにフランス語の口頭表現の練習に付き合ってくれる人が見当たらないのであれば、italkiを使いましょう。DELF用クラスを持っているプロの先生が多数在籍しています。
作文に関しては、今から紹介する対策本で十分です。文書作成(Production écrite)で求められる、文章のフォーマット(手紙、エッセイの形式から出題されることが多い)を身につければ、文章を書くのが楽になってきます。


B1受験に使った参考書
100% réussite B2
一番試験に即した内容でバランスが良い対策本です。これ1冊を2周以上すれば、相当楽になります。とにかくレイアウトが見やすくわかりやすい!B1の時に併用していた青本は、B2の時ではほぼ使いませんでした。基礎(文法・語彙・発音)ができているなら、対策本はこれ1冊だけでもいいのではないでしょうか。
Delf B2
俗に言う「青本」がこちら。私は補助的に使った程度ですが、サブの対策本がほしいなら選択肢に入れてもいいと思います。
Les clés du mot DELF B2
読解の対策として購入。個人的にサブの対策本としてイチ押しです。P.E.とP.O.の形式がわかりやすく解説されており、語彙や文法の補助的学習ができたという意外な拾い物でした。
Vocabulaire progressif du français B2-C1.1
こちらも定番。最低限の語彙を入れるなら、1冊は使い切りたいですね。

テクニックを身につければ受かる
最後に。試験勉強で身につけるべきはテクニックです。リスニング、リーディング、口頭表現、作文、それぞれに効くテクニックがあります。真面目に勉強している人ほど、こういったテクニックを無視しがちです。皮肉なことに多く時間を割いて勉強すれば、受かるのかといえばそうでもありません。受かる人というのは、大概が要領よくポイントを押さえて勉強しているものです。落としたくない試験ほど余力を残しながら、対策をしていくのが良いと私は思っています。例えば、試験前日に疲れていたら、内容に自信がなくても、体調やメンタルを整えた方が受かるもんなんですよ。
フランス語の勉強に疲れたら、思い切って休んでください。あなたが勉強してきたフランス語が本当に身についていたとしたら、1週間ぐらい休んでも忘れることはありません。試験勉強で身につけるべきはテクニックです。もちろん休むテクニックも…。